【書評】松下幸之助 夢を育てる―私の履歴書

 

本書はパナソニック株式会社(旧松下電器株式会社)の創業者である松下幸之助氏の幼少期から会社設立、相談役に退くまでを描いた自伝で、日本経済新聞の「私の履歴書」をまとめた本になっています。

経営の神様。

松下氏が「経営の神様」と呼ばれている事はもちろん私も知っていましたが、これまで著書を読んだことがなかったので、その所以を知りませんでした。

本書は具体的な経営手法というよりも、松下氏の人柄や心情、人生の節目に何を考えていたかなどがメインになっています。経営手腕を知りたい人には向かないかもしれませんが、私の様に初めて松下氏の本を読む人には良いと思います。

以下は主に印象的だった部分です。

 

経営というものの価値。

ヨーロッパの技術が日本の技術発展に欠かせないと考えて、松下氏は既に取引のあったオランダのフィリップス社とエレクトロニクス分野での技術提携を行なおうとしました。その際に問題になったのがロイヤリティー。フィリップス社は提携の条件として、技術指導料を要求してきたのです。松下氏はそれに応じながらも、合弁会社の経営監督は松下電器だとして、「経営指導料」を要求し、合意させました。

今では経営コンサルティングなどありますが、当時の日本の国力がそもそも欠しい時期に経営というものを正当に評価してロイヤリティーまでもらおうとする考えはある意味したたかで、それだけ経営を大切にしていたという気持ちが分かります。

 

日本を想う心。

PHP研究所って松下氏が立ち上げたの知りませんでした。

新政治経済研究所を発足し、電機業界に一人者でありながら、観光大臣として日本の観光業に意見を述べています。景観の美・自然の美を世界に与えるよう観光に対する認識を変えていく必要がある、と。持てるものを与える博愛精神と、日本が平和になるという利益を考えている姿は驚きました。日本の繁栄という点で、経営も観光も関係なかったのかもしれませんね。

 

経営は芸術なり。

印象的すぎる言葉。

絶えざる創意工夫を通じて無から有を生み出し、あらゆる面でよい創造活動を行なうことが経営だ。それらの経営活動が非常に適切にバランスよく行なわれているときに経営者が生き生きと躍動した姿としてあらわれ、それを見る人に感動を与え、嘆賞されるようなものが創造される。

このように経営とは非常に高い価値を持った芸術的活動であると述べられています。

絵画の様に目で観て、音楽の様に耳で聞いて自分で感じるという事は経営においてはできません。しかし自分の会社従業員や顧客が、「ともに歩んでいきたい、仕事をしたい」と感じるほどであれば、それは感動を与えているということであり、芸術と同様なのかと思いました。

 

強引だが納得。

本書より印象的だったエピソードについて見て行きました。松下氏の独特な経営哲学、人生哲学が盛り込まれていたように感じ、強引だが納得できる部分が多かったです。次に読むときは違った見方になりそうだ、と感じるところが面白かった。自分がいる環境が変わるタイミングなどで読み返したいと思います。

では。