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人生を自らドライブするために。

【休職中】大手SIerで働く社会人。勉強と趣味とライフログを兼ねて当ブログを運営しています。興味の幅広め。「自分の人生、自分でドライブしよう。」

 

【書評】職業は武装解除【瀬谷ルミ子】

本・書評
 

「武装解除」という職業をどれだけの人間が知っているでしょうか。最初にこのタイトルを見た時は何かの比喩表現かと思いました。しかし、世界各地の紛争地帯で武装解除を仕事としている人々が存在するのです。本書は日本でも数少ない武装解除の専門家「瀬谷ルミ子」氏の自伝です。紛争、国際貢献といった分野だけでなく、自分の人生の生き方に悩んでいる人にもオススメの一冊です。

 

職業は武装解除。

武装解除とは、紛争が終わったあと、兵士から武器を回収して、これからは一般市民として生活していけるように職業訓練などをほどこし、社会復帰させる仕事である。

兵士の武装解除(Disarmament)、動員解除(Demobilization)、社会復帰(Reintegration)の頭文字を取って、DDRと言われる専門分野だ。著者が、元兵士をいかに社会に戻すか、という問題を発見したときは、まだDDRという単語さえメジャーではなく、国際的に見てもその分野に取り組む人は少なかったそうだ。

和平合意が結ばれて紛争が終わっても、それだけで人々が安全に暮らせるわけではない。紛争が終わるということは、兵士にとっては、明日からの仕事がなくなるということだ。ただでさえ、紛争の直後は、家や工場、道路などが破壊され、仕事もなく家族を養うことができない人々であふれる。そんな状態で、手元に銃があり、戦い方を熟知している兵士たちの不満が爆発するような状態が続いたら、また武装蜂起して争いに逆戻りする危険がある。それも避けるため、兵士や戦闘員から武器を回収し、除隊させたうえで、一般市民として生きて行けるように手に職をつける職業訓練や教育を与える取り組みが、DDRである。

 

和解・平和の裏。

ニュースで紛争しているある民族同士が和解したと流れたとする。それを聞けば「和解=万々歳」のイメージしかこれまでは持っていなかった。しかし、ひとりひとりに目を向ければ、そんな単純な事ではないと直ぐに理解できる。自分の家族を失ったのに、その加害者と仲良く手を取り合って生活していきましょうとはならない。加害者側からしても報復を恐れて直ぐに武装を解くことはできないだろう。著者が考える和解の形は大変共感できた。昨今の日中韓においても、諸問題は山積しているが争わずに解決の糸口を見つけて行く事が大切になる。

「和解」とは必ずしも、手と手を取り合い仲良しである形ではなく、たとえ緊張状態でもお互いに争いや暴力を使わずに問題を解決できる状態で共存できるということだ。

 

戦争が終わっても武器を所持したままでは、いつどこで火種が爆発するか分からない。治安回復のためにも武器の回収が必要になる。しかし実際には多くの人が手放す事を拒み、武器と引き換えに何かを要求される事がある。多くの場合、内戦中に行なった戦争犯罪を無罪にすることらしい。犯罪に問われるなら武器は渡さない、思考としては最もだ。アフリカのシエラレオネでも兵士は恩赦を与えられ、経済的にも不満が出ないように手に職を付ける権利を得た。

平和とはときに残酷なトレードオフのうえで成り立っている。安全を確保するためのやむをえない手段として、「加害者」に恩恵が与えられる。その加害者には元子ども兵士のように好んで加害者となったわけではない、むしろ紛争の被害者と言える者もいる。

自分の腕を落とした人間が、罪にも問われず、職業訓練を受けて幸せな家庭を築いて隣人として暮らしているのを、彼はどんな想いで眺めるのだろうか。

日本には当たり前のようにある「平和」という状況を、紛争地の人々は、我が身を削りながら、少しずつ積み上げて創り上げている。

 

武器の破棄。

興味深かった武器の破棄方法。アフガニスタンのように銃が大切に扱われる社会では、回収した武器を人前で破壊する事は逆に兵士から冒瀆だと受け止められ反発が起きるので、新しい軍で再利用をする。一方カンボジアでは、国民に戦争が終わった事を実感させる為に、大量の武器を焼却する式が行なわれるとのこと。

武器の破棄方法は、二十通りほどある。安上がりに済む方法、高価だけれど時間がかからない方法などさまざまだが、そのなかから和平効果、社会の文化背景、国民感情、必要な時間、予算などに応じて決めることになる。ちなみに、もっとも安上がりで手間もかからない武器を破壊する方法は、コンテナーに武器を詰めて、海に沈めることだ。

 

日本紛争予防センター(JCCP)の活動。

著者が事務局長(現在は事務長)を勤めていたJCCPの活動は「紛争地の人々に生きる選択肢を増やす」ことを目的としており、その為の4ステップを設定している。著者の願いは、いつかJCCPのような組織の役割が終わる日が来ることだ。

ステップ1:治安の改善(DDRや司法改革など)
ステップ2:最低限の生活環境(衣食住やトラウマを持つ人への対処)
ステップ3:経済的・社会的な自立(自活して生きる道を築く)
ステップ4:和解 

 

瀬谷ルミ子氏の生き様。

著者の生き様、人生の岐路での考え方は、あらゆる人の学びとなるだろう。大きく3つ取り上げたい。

一つ目は、「自由に行動することができる権利」を最大限使って生きること。紛争地帯に住む人々には選択肢がない。日本という平和な国に生まれ、努力すれば状況を変えられる世界に住んでいるのは当たり前ではないということを改めて心に刻みたい。今後の人生を自らドライブするために、その権利を使う道を考えていきたい。

二つ目は、20代のうちは何かの岐路に立ったとき、直感的、そして実力がつきそうな選択肢を選んで行動するということだ。これは普段の生活の中で、意識をしていないと忘れてしまいそうだ。人生は選択をし続けることなので、小さな選択も含めて意識していきたい。また、その際は自分で自分の背中を押す為にも、他の退路を絶つということも大切だ。著者はこの方法を取り続けている。私は強い人間ではないのでこれが必要になるかもしれない。

三つ目に、やらない言い訳をしないということだ。やらない言い訳をするだけで、問題解決の糸口を考えることから逃げてしまい、ただでさえ困難な問題がさらに難しくなってしまう。やらない言い訳という考えが頭に浮かぶ前に、解決への突破口を考える癖はつけていきたい。

まずは人生をどう生きて行くか、改めて考える良いきっかけになるだろう。

では。

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